皆さんはIotという言葉について、ご存知でしょうか。
聞き慣れない単語だし、よく分からないという方も多いのではないかと思います。
しかしその技術が、地方の生活やビジネスを大きく変える可能性を秘めているとなれば、少し興味が湧いてくるのではないでしょうか。
今回はそのIotとは一体何なのか、そしてそれが福島県に与え得る影響には一体どんなものがあるのかについて、考えていきたいと思います。
Iotとは
そもそもIotとは、「Internet of things」の頭文字を取った言葉です。これは直訳すれば「モノのインターネット」という意味になりますが、それでもまだ分かりづらいかと思います。
そこで、まずは参考までにこの動画をご覧ください。
これは象印が提供している「みまもりほっとライン」というサービスで、
簡単に言えば「電気ポットがインターネットに繋がっており、誰かがお湯を使うたびに家族にメールが届く」というサービスです。
これはつまり電気ポットという「モノ」が「インターネット」に繋がっており、Iotの一種であると言えます。
この流れでもう一つの例をご紹介します。
いかがでしょうか。
昔漫画の中などで描かれていた、近未来的な生活がIotを使うことで現実のものとなっています。
ちなみにこの動画の中で使われているIotロボットとしては、主に「Switch Bot」と「Alexa」があります。
まずカーテンレールに設置された「Switch Bot」がタイマーで作動しカーテンを開けます。
次に「Alexa、おはよう」の声に「Alexa」が反応し、部屋の中の様々なIotロボットに指示を出します。
具体的には「エアコンをオンにする」、「プラグをオンにしてコーヒーを自動で淹れる」、「テレビを自動でつける」などです。
部屋の中でここまでIotを使いこなす人はまだまだ少ないですが、今後さらに使い勝手の良いIotロボットが開発されていけば、私たちのようなそこまで詳しくない人たちでも、
簡単に日々の生活の手間を削減することができるようになるでしょう。
この他にもIot×自動車=自動運転など、これからも様々な面で恩恵が受けられるようになることが予想されます。
様々な業種で可能性が模索されるIot
先ほどご紹介したIotの活用例はほんのさわりでしかありません。Iotは生活の中だけでなく、今やビジネスでも広く活用されています。
以下に業種別で、今後Iotの活用によって可能になると予想されるシステムをご紹介していきます。
<配送業>
近年コロナの影響で多くの人が利用する”通販”ですが、その影響でかなりの人手不足と業務量に悩んでいるのが配送業界です。
そんな業界の人手不足を解消するために、クロネコヤマトではIotを活用した「自動運転配達」の実現を目指して、積極的に実験を行なっています。
自動運転までは何とか想像がつきますが、まさか配達まで自動でできるようになったと考えると、これが配送業界に与える影響はかなり大きいものとなることが予想されます。
実はアメリカでも自動運転×配達を実現するための画期的な試みが行われており、世界的ビールブランドであるバドワイザーは、
2016年の実験でフォートコリンズからコロラドスプリングスまでの120マイル(約193キロ)を、人間がほとんど運転をすることなく自動運転で5万缶のビールを配達することに成功しています。
自動運転には事故が起こった際などの責任の所在を誰にするのかや、その安全性の面から実際に導入されるまでにはまだまだ時間がかかると予想されますが、
今後はこの方面にシフトしていくであろうことは間違いありません。
<農業>
農業の人手不足は今に始まったことではありませんが、近年その人手不足は深刻といえる状況にまで落ち込んでいます。
以下が現在の日本における就業人口を表した表です。
出典:農業労働力に関する統計(https://www.maff.go.jp/j/tokei/sihyo/data/08.html)
結論から言えば、「平成22年からの約9年間で、農業就業人口は約92万人も減少している」ということがこの表からわかります。
仮にこのままの推移でいくと、10年後には農業に従事する人が100万人を切る可能性もあり、早急な改善が求められています。
そんな人手不足を解消する可能性の一つとしてあげられるのが、Iotの活用です。
例えば農薬の散布はこれまで人が行なってきましたが、ドローンを活用することによりその手間を削減することができるようになってきました。
ちなみに私の親戚で農家をしている方がおりまして、実際にドローンでの農薬散布を業者に依頼したということも聞いたことがあります。
また、自動運転は車だけでなくトラクターの世界でも実用化が期待されています。
実際に国内最大手のヤンマーでは、トラクターを自動・半自動で運転させることができる技術の開発を進めています。
こちらのトラクターはすでに実用化されているようで、何とトラクターに乗らずともタブレットなどで遠隔操作をすることが可能となっています。
詳しくはヤンマーの公式サイトをご覧ください。(https://www.yanmar.com/jp/about/technology/vision2/robotics.html)
<教育>
教育の現場でも徐々にですがIotを活用した取り組みが始まっています。
いくつかの学校では生徒にタブレットを配布し、タブレットを授業内で積極的に利用しています。
Googleでも教育業界の従事者をサポートするために「Google Classroom」と呼ばれる無料のサービスを提供しており、先生たちの業務を楽にしてくれています。
このGoogle Classroomは一言で言えば「Web上にクラスを作れる」サービスとなっており、
「課題の提出」や「資料の共有」など、これまでは紙でしか行えなかった様々な業務が削減できるようになりました。
特に多くの時間を要した「テストの採点」なども簡単に行えるため、非常に使えるサービスとして重宝されているようです。
教育業界でのIot活用は、このコロナの状況において、その重要性や利便性は非常に注目を集めています。
学校のみならず塾などでもオンライン指導を新たなアピールポイントとして打ち出すなど、その応用範囲の広さは目を見張るものがあります。
<介護>
昨今の高齢化と少子化の影響により、介護業界でも深刻な人手不足が常態化しています。
特に東京などでの人口密集地では、介護関連職種の有効求人倍率が4倍となるほどの深刻な状況となっています。
その中でもIotを活用することで、介護従事者の負担の軽減や人手不足を解消しようという試みがなされています。
例えば、排泄を予測するロボットを介護を受ける人に装着し、予め排泄を促してあげられるような仕組みがすでに作られています。
これだけでもかなり先進的なイメージがありますが、パナソニックではIotやAIなどを活用して、さらに高度な介護を実現しようとしています。
パナソニックの高感度なセンサーやカメラを活用し、介護を受ける人の心拍・血圧や挙動など様々なデータからAIが独自の判断を行い、
人間が気づかない異変に気づくことができ、それにより効率的かつ手厚い介護を実現することができます。
しかもセンサーを使ったデータを活用することで、体温検診や血圧測定などの日常業務の多くが削減され、介護従事者の手間をかなり省くことができるようになります。
Iot×福島が抱える問題点
ここまでIotの持つポジティブな可能性をご紹介してきましたが、全てがこのようにうまくいくとは言えないのではないか、と私個人では考えています。
例えば、自動運転のトラクターは確かにとても便利であり、多くの作業の手間を省いてくれる革新的なプロダクトであると言えます。
しかし問題なのは、それを使いこなせない人が多い可能性が高い、ということです。
現在の就農人口の平均年齢は67歳前後となっており、その年代の方々であれば控えめに言っても7〜8割の人はこう言った技術をうまく使いこなせないようなイメージがありますし、
そもそもそう言った技術の力を借りようとしない人も多く、さらに言えばこれら最新式のトラクターの値段は1,000万円〜と非常に高額である点からも、
普及のスピードが上回るのが先か、就農人口が極端に減少するのが先かという非常に厳しい状況であることには変わりがないと思うのです。
またクロネコヤマトの自動運転配達などについても、高齢者はスマホを使いこなすことが難しく、うまく荷物を受け取れない、送れないという問題が発生する可能性があります。
さらに、Iotに頼った介護を行うことで、人との触れ合いの回数が少なくなってしまう可能性も考えられます。(もちろん、Iotによって新たに確保できるようになった時間で、その分を穴埋めすることも可能だとは思いますが)
Iot×福島を現実的に考えるなら
ここで少し話が逸れますが、私は福島県の企業のWeb広告やWebマーケティングなど、Webを活用したプロモーション支援を行なっています。
その中でぼんやりと感じていることが、「福島には”翻訳者”が必要なのではないか」ということです。
何かを理解している人が、それを誰にでも分かるように噛み砕いて丁寧に説明する。
いわば「わかりにくいこと」を「わかりやすく」翻訳して伝えることができる人材が、これからの福島や地方においては、とても重要なのではないかと思うのです。
Iotを基点として、それぞれの分野での活用方法に長けた人間がそれらを噛み砕いて説明してくれたり、
時には現地に赴いて実際にどのように活用できるかを教えてくれる機会が多くなれば、地方においてのIot活用はさらに発展するのではないかと思います。
5GによるIot活用はさらに上のステージへ
最近では日本でもようやく5Gが利用開始となり、iPhone12の発売などにわかに業界が活気付いているように思います。
この5Gについては別の記事(5Gは福島をどう変えるのか)にて詳しくご説明していますが、この新たな通信規格の導入により、福島のIot活用がさらに加速することが期待されます。
まだ5G対象の地域に福島は含まれておらず、現在は東京のさらに一部の地域のみで使用できるに留まっていますが、
来年以降日本全国に5Gが本格的に導入されれば、福島のIot活用もまた一つ上のステージへステップアップするのではないかと、密かに期待してもいます。
人口が年々減少する福島で
2040年ごろには、約40万人近くも人口が減少すると予想される福島県において、これまで以上の深刻な人手不足が起こるであろうことは、もはや当然のこととして考えておく必要があります。
Iotの活用のみならず、海外からの労働力の確保や人口増加のための様々な施策は、福島県単体でなし得るほどの簡単な問題ではありませんが、
国が何かをしてくれるのを待つだけでなく、民間ベースにおいてもできる限りの備えをしておくということは、決して無駄なことではないと思います。
まずは自らの分野において、現在の技術の中で自社に活かせるものはないか、アンテナは常に高く立てておきたいと思います。
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